子のいないご夫婦 病院での自筆証書遺言の作成

夫Aさんと妻Bさんは、子どものいない高齢のご夫婦です。

ご夫婦の相談を受けている福祉関係の方から、私のところへ電話が入りました。

「Aさんの病気が悪く医師から余命を宣告されたので、ご本人は遺言を書いておきたいと言っている。ご夫婦の自宅に来て相談に乗ってもらえないだろうか。」
そこで、ご自宅を訪問する日時を決めました。

ところが前日になって、福祉関係の方から「Aさんの容態が悪化し急遽入院することになったので明日はキャンセルして欲しい」との連絡が入りました。
私は、「間に合わなかったか」ととても残念に思いました。

ところが数日後、また福祉関係の方から、「明日病院に来てAさんの遺言書作成の手伝いをしてもらえないか」との依頼が入りました。

 

当事務所からの提案&お手伝い

当日、病院を訪問したところ、Aさんは病院のベッドで待っていました。

状態はかなり悪く満足に言葉を出すことができませんが、ご本人の意思を確認することは問題なくできました。
また、かねてより自分で書いていた自筆の遺言をお持ちでした。

遺言の内容は、「全財産を妻のBさんにゆずる」という内容で、私の方で確認したところ自筆証書遺言として有効な遺言でした。
私はAさんに遺言の内容に間違いがないか確認し、Aさんに遺言書に日付を入れてもらい、遺言は完成しました。
その日は、妻のBさんにAさんに万が一のことがあった場合の対応方法を説明して、病院をあとにしました。

数ヶ月後、妻のBさんから連絡がありました。
「あれから夫はまもなく亡くなり、最近ようやく落ち着いてきたのでそろそろ遺言の手続をして欲しい」とのことでした。

私は、まずは、Bさんからの依頼で、家庭裁判所に遺言書検認の申立書を作成し提出しました。
検認の当日には、Bさんに伴って家庭裁判所に出頭し、無事検認の手続を済ませました。
Aさんの遺産の詳細は分かりませんが、自宅の土地建物が主な財産だったようです。

私は、検認済の遺言書を預かり、戸籍謄本等の取り寄せをして、AさんからBさんへの自宅の名義変更はほどなく完了しました。
その他の相続手続は、Bさんが自分でやってみるとのことでした。

 

専門家の意見

このケースは、遺言がぎりぎり間に合った事例です。本当に間一髪という感じでした。

子どものいないご夫婦間での遺言は本当に大切です。
もし、Aさんが遺言をのこしていなかったら、BさんはAさんの相続人である兄弟姉妹全員に連絡を取って遺産分割の話し合いをしなければなりません。

兄弟姉妹の中に自分の相続分を強固に要求する人がいたら、場合によっては自宅を売却しなければならなくなるかも知れません。
兄弟姉妹の中に行方不明・音信不通の人がいたら、その後の手続がかなり煩雑になり、時間もかかることになります。
それが、遺言書があれば、兄弟姉妹に連絡を取ることもなく、Bさん一人で相続の手続ができるのです。
また、兄弟姉妹には遺留分がないので、後日遺留分を請求されることもありません。

まもなく死を迎えるという病床で、Aさんは最後の力を振り絞って遺言を残されました。
それが妻Bさんへの愛情だったと思いますし、Aさんも安心して最期を迎えられたのではないでしょうか。

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