会社経営者の遺言の作成から遺言執行まで行った事例

Aさんは中小企業の経営者です。Aさんは自分の代で会社をおこしましたが、そろそろ引退も考えなければならない年齢になってきました。そのようなおり、健康診断で癌が見つかり、事業の引継のことを真剣に考え始めました。

Aさんは、スムーズに事業を承継し相続で問題が起こらないようにするために遺言を作成したいと考え、当事務所に相談に来られました。

当事務所からの提案&お手伝い

私は、まず、Aさんに病気のことや家族関係をお聞きしました。

Aさんの家族関係は次のとおりでした。Aさんには、長男Bさん、長女Cさん、二男Dさんという3人の子どもがいます。Aさんの妻は、Aさんよりも先に亡くなっており、相続人となるのは3人の子どもです。長男Bさんは生まれつき知的な遅れがあり、現在は知的障がい者の作業所に通っています。長女Cさんは嫁いで遠方で生活しています。二男DさんはAさんの会社に入っています。まだ経験が乏しいところはありますが、AさんはDさんを自分の後継者にしたいと考えています。

次にAさんの財産の聞き取りをしました。
Aさんは、会社経営者として相当な金額の預貯金や有価証券を持っていましたが、その他に賃貸アパートを数棟所有していました。

Aさんとの話し合いの中で、遺言の内容を検討しました。
まず、会社の株式を含め会社関係の資産は全て後継者のDさんに相続させることにしました。賃貸アパートについては、障害年金の収入しかないAさんの将来を考え、収益性の高い物件をAさんに相続させることにしました。その他の賃貸アパートと自宅は、Dさんの生活も考え、Dさんに相続させることにしました。預貯金については、遺留分のことを考慮してCさんに多めに配分して、子ども3人に分けることにしました。残った財産については、会社や家を守っていくことになるDさんに全て相続させることにしました。

以上の内容で公証役場と事前の打ち合わせを行い、当日はAさんも公証役場に出向いて、公正証書で遺言を作成しました。
なお、遺産の内容が多岐にわたり相続の手続が大変そうでしたので、Aさんから頼まれ私が遺言執行者として指定される内容になりました。

専門家の意見

遺言書を作成した後、しばらくはAさんからの電話もあり、元気な声が聞けていました。
Aさんからの連絡が途絶えた後、次に連絡があったのは、Aさんの会社の顧問税理士の事務所からでした。
Aさんがお亡くなりになったこと、私が遺言執行者になっているので今後のことを打ち合わせたいという連絡でした。

相続人や税理士事務所の方と打ち合わせを行い、遺言書どおりの内容で相続することで合意が得られました。
私は、遺言執行者として財産目録の作成からはじめ、順次相続の手続を行いました。
賃貸アパートや自宅は相続の登記が必要です。これは遺言執行者の業務には入りませんが、司法書士の専門分野でもあり、私の方でお手伝いしました。

不動産の関係で大変だったのは、不動産に設定されている抵当権等の手続でした。会社関係の借入や賃貸アパート関係の借入等の銀行手続がかなり複雑で分量もあり、銀行と打ち合わせながら、また、書類作成を手伝いながら相続手続を進めました。
これら不動産や不動産がらみの銀行の相続手続は、司法書士が遺言執行者の場合には、法的な判断から不動産登記の手続きまでひとまとめでサポートできるので、メリットがあります。
その他、有価証券の現金化などを行い、遺言執行の業務が完了しました。

振り返ってみると、会社経営者の方の遺言執行となるとかなりの分量があり、手間と時間がかかりました。
これらの手続を全て相続人の方が行うのはとても大変です。仕事をしながらであれば、まず不可能かもしれません。
Aさんが司法書士を遺言執行者として選ばれていたのは正しい選択だったのだと、遺言執行者である私自身もあらためて思いました。

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