長い間内縁関係にあった妻への遺言

高齢の男性Jさんは、最近医者から重い病気にかかっていることを告げられ、自分の余命のことを真剣に考え始めました。

Jさんには2人の子どもがいますが、子どもがまだ小さいときに離婚し、子どもは妻が引き取ったため、子どもとの関係は疎遠です。Jさんには、現在、20年ほど連れ添った内縁関係の妻がおり、今まで籍を入れないまま生活を共にしてきました。内縁の妻との間には、子どもはいません。

Jさんは、病気が進行して身体の自由がきかなくなる前に相続の問題を何とかしておかなければと考えて、当事務所に相談に来られました。

当事務所からの提案&お手伝い

Jさんに万一のことがあった場合、Jさんの相続人は2人の子どもになります。内縁の妻は、長年Jさんと生活を共にしてきたにもかかわらず、相続に関しては何の権利もありません。Jさんが内縁の妻の今後の生活のことを考えて財産をあげたいと思うのであれば、この機会に籍を入れるか、遺言をのこしておかなければなりません。籍を入れれば、法律上も正式に妻となりますので、法定相続分として相続財産の2分の1を取得する権利が発生します。

しかし、残りの2分の1は子どもに権利がありますので、妻は子ども2人と遺産分割協議をしなければなりません。会ったこともない前妻の子どもとの遺産分割協議は、考えただけでももめることになりそうです。籍を入れるかどうかはお互いの気持ちによるとは思いますが、遺言は必ずのこしておくべきです。あとあとのトラブルのことを考えれば、当然、公正証書が望ましいことはいうまでもありません。遺産分割の手間を考えると、遺言の内容としては、財産を全て妻にあげることにすべきでしょう。

また、子どもから遺留分減殺請求がなされることへの対処として、付言事項で長年連れ添った妻への感謝の気持ちなどを入れた方がいいかもしれません。

このようなアドバイスをして、あとはJさんからの連絡を待つことになりました。

専門家の意見

Jさんは、妻と話し合って婚姻届を出すことになりました。その後、当事務所の方で準備をして、公正証書で遺言を作成しました。内容は、「財産は全て妻に相続させる」として、Jさんなりに考えた付言事項も入れました。ここまでしておけば、Jさんが亡くなった後、妻は遺言書をもとに一人で相続の手続をすることができます。他の相続人と遺産分割協議をする必要もありません。

一方、付言事項を入れたにもかかわらず、妻が他の相続人から遺留分減殺請求を受けることがあるかもしれません。

とはいえ、Jさんの財産は預貯金が中心でありその金額も十分ありますので、万が一遺留分の請求を受けたとしても、遺留分に相当する金銭を相手に渡せば特にもめることもないでしょう。

Jさんがこのような遺言をのこしたことで、Jさんの妻に対する想いが実現できますし、あとに残される者に無用なトラブルが生じることもなくなることでしょう。

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