家業を継いだ長男とその妻に配慮した遺言

Aさんは、家業を継いで地元で商売をしています。
Aさんは三人兄弟で、弟のBさんとCさんは、独立して家族を持ち関東方面で生活しています。
Aさんの父Xさんはすでに亡くなり、その時は、自宅や商売に必要な不動産や預貯金はXさんの妻Yさんが相続し、その他の賃貸アパートなどの財産は、子ども三人で分けました。

今回は、母Yさんの遺言の相談です。

Yさんは、自宅や商売用の不動産を含め、財産は全て家業を継いで家を守っているAさんに残したいと思っています。
また、日頃よく面倒を見てくれているAさんの妻にも少しはお金をあげたいと思っています。

 

当事務所からの提案&お手伝い

私は、Yさんのご相談を受け、BさんCさんの遺留分の話をしました。

遺言で全てAさんにあげるとしても、BさんかCさんが遺留分の請求をすることもあるので、その分ぐらいはBさんCさんに分けることも考える必要があることを説明しました。

これに対しYさんは、「Aさんは高校を卒業して家業を継いで家を守ってきたが、BさんCさんは大学や大学院まで行かせてあげたので、それ以上にあげるつもりはない」とはっきり言います。

そこで、Yさんの気持ちを最大限に尊重して、ほとんどの財産はAさんに相続させて、預貯金の一部をAさん妻に遺贈する内容での遺言を作成することになりました。
また、遺留分対策をしないことに関しては、付言事項を残しておくことを勧めました。

付言事項とは、一般的には、遺言する人の思いや残されていく人へのメッセージを書き記すものです。

Yさんの場合は、「BさんCさんには多額の教育費をかけてきたがAさんは高卒で家業を守ってきたのでこのような内容の遺言を残したこと、このような自分の気持ちを汲んでこれからも兄弟仲良く過ごして欲しいこと」を書くことになりました。
また、後日の争いにならないように公正証書ですることも勧めました。

 

専門家の意見

遺言を作成して数年後、Yさんはお亡くなりになりました。

Aさんは、私のところに遺言書をお持ちになり、相続登記を依頼されました。
Aさんが言うには、兄弟からは特に遺言の内容に反対は出なかったとのことでした。

このようなケースでは、場合によっては遺留分の請求がされることもあるでしょう。
ただ、付言事項があることで一定の抑止効果はあるようです。
付言事項には法律的な強制力はありませんが、相続人の感情に働きかける力があります。

積極的に活用したいものです。

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