子のない40歳代の夫婦 2人同時に遺言作成(清算型遺贈は可能?)

Sさんご夫婦は、40歳代の子どものないカップルです。

子どもがいないので、ご夫婦のいずれかが亡くなったときは、相手方と兄弟姉妹が相続人になります。Sさんご夫婦は、万が一の時には相手方に確実に財産を渡したいと考え、遺言の相談に来られました。

Sさんご夫婦としては、夫婦の一方が死亡したときは、全ての財産を相手方に相続させるという内容の遺言にすることで考えは決まっていました。Sさんご夫婦は、それに加えて、ご夫婦が同時に亡くなったときや、相手方が先に亡くなりそのあとにもう一方が亡くなったときのことなどもあれこれ考えていらっしゃいました。そのような場合には、かわいがっている甥姪に財産をあげたいとのご希望もありました。

夫の財産としては、自宅の土地・建物がありましたが、もし妻が先に亡くなりそのあとに夫が亡くなったときには、自宅を売却してそのお金を双方の甥姪にあげたいとも考えていました。これは、「清算型遺贈」というものになります。「清算型遺贈」には、いろいろと問題点もあります。

 

【当事務所からの提案&お手伝い】

「清算型遺贈」は遺言執行の手続の中で不動産を売却することになりますが、法定相続人の全員に不動産売却に伴う譲渡所得税が課税されます。相続財産を引き継がない相続人も関係なく課税されるため、あとあとトラブルになるおそれもあります。

このようなトラブルを回避するためには、遺言ではなく民事信託を利用するという方法があります。遺言に比べ民事信託は柔軟な対応が可能であるため、最近注目され始めた制度です。

そこで、Sさんご夫婦に対して民事信託による方法についてご説明しました。民事信託では事務を信頼して任せることができる受託者というキーパーソンが必要です。しかしながら、Sさんご夫婦の場合、受託者になってもらえそうな人が想定できなかったため、今回は民事信託についてはあきらめ、今後の課題とすることになりました。

Sさんご夫婦は、それぞれ相手方に全財産を相続させる、遺言執行者はそれぞれ相手方とするという内容の公正証書遺言を作成されました。これで、お互いに万が一のことがあってもとりあえず一安心となりました。

 

【専門家の意見】

遺言や相続に関する手続は、税金の問題までよく検討する必要があります。

今回出てきた清算型遺贈は、譲渡所得税等の問題もあり、実際にはなかなか利用されていないのではないでしょうか。

一方、最近注目されている民事信託は、当事者が自由に内容を決めることができるため、遺言では実現できない資産の承継も可能だと言われています。今後が期待されている新しい制度です。

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